ゼロスの告白




とある海岸。
 夕日が海を真っ赤に染める頃、波打ち際に一人の男が立っていた。何をするわけでもなく、じっと海を見つめ、時には
小さなため息をついていた。 男の名は、ゼロス。
 見た目は、優しそうな人間の姿をしているが、魔王シャブラニグドゥーの腹心、獣王 ゼラス=メタリオムに仕える
獣神官・・・立派な高位魔族である。 「ゼロスぅ、呼んだぁ?」
 ゼロスの背後で、少女の声がした。ある理由で共に旅をする人間たちのグループのリーダー的存在、リナであった。
「ああリナさん。すみません、急に呼んだりして」
 ゼロスは、やや恐縮した面もちでリナの方を見た。
「あのねぇ、もうすぐ夕食前だっていうのになんだって言うのよ。あたしが、ご飯の前に何かあると、期限が悪くなること
くらい、あんたは知っているしょう」
 いらついた口調でリナはゼロスに言い放った。
「ええ、もちろんそれは知っています。ですが、どうしてもリナさんにお話ししなくてはならなかったので・・・」
「ふ〜ん。だったら早くしてよね。でないと、ガウリイの奴に夕食全部食われちゃうんだから」
 と言って、リナはゼロスの隣に腰掛けた。
「それで・・・話って?」
 リナに聞かれたゼロスは、神妙な表情でゆっくいりと話し始めた。
「実は・・・・リナさんたちと、お別れしなくてはならなくなったのです」
「ほえ?・・・お別れ?」
 リナが、不思議そうな顔でゼロスを見た。
「ええ、獣王様から戻ってこいという命令がありまして」
「とか何とか言っちゃって、しばらく姿消した後『リナさん。済みませんがお命いただきます』とか言って、黒い錐であたしの
体をまっぷたつにしようとしてるんじゃないの?」
「今のところそんなことはしませんよ」
「じゃあ、この前食事したときに貸したお金、返せなくなって上司の命令とか言ってごまかすつもりなんでしょう。
ふっ・・・さすがは、高位魔族ね」
「覚えていたんですね。でも、それも違います。まあ、そんな小さな悪事で、あまつさえ獣王様の名前を出されましても
非常に困るのですが・・・」
「じゃあ、一体なんだって言うのよ」
 じれったそうにゼロスに聞くリナ。ゼロスは、少し黙りそして前を見て、ゆっくりとした口調で言った。
「実は・・・人間に・・・恋をしてしまったのです」
「ふ〜ん。・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、こ・・・こいっ!!??」
「り・・・リナさん!!そんなに大きな声を出さないでください。周りに聞かれたらどうするんですか!?」
 リナの絶叫に、ゼロスはかなりあわてた様子で、リナを制止していた。リナも、自分の声があまりにも大きかったので、口を押さえ
辺りを見回していた。幸い、海岸には人の姿はなく、波の音だけが静かに聞こえていた。
「ゼロスが、人間に恋?あんた、今まで・・・」
「もちろん、こんな事初めてですよ。第一、『恋』なんて言うもの自体存在なんてしてませんから」
「ね・・・ゼロス。ちょっと変なこと聞いていい?」
「何ですか?」
「おんな・・・だよね・・・」 ─── ずぼっ!!───
ゼロスの顔は、思いっきり砂に埋まっていた。
「あのう・・・そこで、そんな冗談を言える状況でしょうか・・・」
 ジト目でリナを見るゼロス。リナもあわてて
「そ・・・そうよね。そこで、冗談でも男なんていうこというわけ・・・ないよね。続けて」
「はぁ・・・」
 ゼロスは、一つ咳をし、改めてリナに話し始めた。
「その人に初めてあったとき、僕の体の中に何かが駆け抜けたんです。今までにない感じでした」
「でも、あんたは負の感情を、元に生きているわけでしょ。もしそうなったら・・・」
「ええ、正直苦しんでします。自分の存在自体が、危うくなるわけですから」
「それで・・・いつばれたの?」
「昨日でした。突然、獣王様に呼ばれまして、いろいろと問いつめられまして」
 ゼロスは、そう言ったっきり黙ってしまった。
 静寂があたりを包む。
 リナも、おそらく初めて見るゼロスの深刻な表情に声をかけられずにいた。
 波の音が、先ほどよりも大きく聞こえるような気がする。

───ゼロスが悩みまくっている───

 どれくらいの沈黙が続いただろうか、夕日も沈みかけ少しずつくらくなり始めた頃、ようやくリナの口が開き始めた。
「ゼロス・・・」
「はい」
「解決方法はないの?」
 ゼロスは、うつむいたまま答える。
「一つだけあります」
「一つ・・・だけ?」
「ええ、僕が 好きになった相手を、魔族にすることです。そうすれば獣王様も、認めてはくれるでしょう」
「でも、それは・・・」
「リナさんの言いたいことはわかります。いきなり『すみませんが、魔族になっていただけませんか?』と、聞いて
『はい、あなたの言うとおりにします』なんて、奇特な方はいませんからねえ」
 ゼロスは、自嘲じみた笑みを浮かべた。
「んー。でもさ、とりあえず言うだけ言ったら?人間のことわざにこんな言葉があるの『当たって砕けろ』って、たいしたフォローに
ならないか・・・・」
 どう答えたらいいのか、悩むリナにゼロスは、笑顔を見せ
「そうですね。それもいいかもしれませんね」
 と、答えた。

「ところでゼロス・・・」
「はい」
「あんたの好きな人って、一体どんな人なの?」
「それは・・・」
 表情を曇らせ、口ごもるゼロス。
「どういうタイプの女性かわからないと、あたしもたいしたアドバイスは出来ないし・・・」
「そうですね・・・わかりました」
 意を決したようにゼロスは、リナを見つめた。そして・・・
「僕の好きな人はリナさん・・・・・・・・・あなたです」
「!?・・・えっ?」
 リナ表情が固まる。リナ自身、全く予想もしていなかったゼロスの告白に驚き、そして困惑の表情に変わっていった。
「ハハハ・・・な・・何言っているのかなあ。そんな真面目な顔で冗談なんか言わないでよ」
 動揺しているリナに、ゼロスは表情を変えぬまま
「冗談ではありません。リナさん、僕が好きなのは・・・」
「で・・・でも、どうして・・・」
「理由は先ほども言いましたが、リナさんを一目見たときに・・・ですからリナさん、僕のために魔族になって・・・」
「冗談じゃないわよ」
 ゼロスの告白に、リナはあっさりと拒否の姿勢を見せた。
「なんで、あたしがあんたのために魔族ならなきゃいけないわけ?あたしが何か得でもするの?」
「それは、今までのリナさんの行動からすれば、充分魔族の資格はあります。僕ですら、たまに惨いと、思うときがありますから。
リナさんが魔族になっていただければ、僕たち魔族としましても、こんなに心強い味方はいませんし、さらに滅びへの道を・・・」
「とにかく、あたしはお断りさせていただくわ。人が真剣に話を聞いてあげたと思えば・・・どうせ、あたしのことが好きなんてのも
あたしを魔族にするための口実なんでしょ。あたしは、食堂に戻るから、明日も早いんだから、変なことで時間とらせないで」
「そうですか・・・」

 立ち上がり、戻ろうとするリナをゼロスはじっと見続けた。その目は、先ほどの告白したときの目ではなく、冷たい目だった。
「ゼロス、何じっとあたしを・・・・って、えっ!?」
 リナは、ゼロスに近づこうとしたが、体が動かなくなっていることに気づいた。
 必死に動かそうとするが、何かに縛り付けられたような感じで、」全く身動きがとれなかった。
「最初からこうすればよかったんですよね。とにかくリナさん、あなたには僕のために魔族になっていただきます」
 そう言ったゼロスは、ゆっくりとリナに近づいていく。
「ちょ・・・ちょっとゼロスやめなさいよ・・・」
 リナは、抵抗しようとするが体は動かない。
 ゼロスはニヤリと、しながらリナの目の前にきた。
「さあリナさん。今日からあなたは・・・・」
 ゼロスが言いかけたとき、食堂の方から大きな声が聞こえてきた。

「ああぁっ!!リナさん、ゼロスさん、一体何をやっているんですか?」
 リナたちと共に旅をする、アメリア。そして、アメリアの隣にはゼルガディスが立っていた。
 二人は、リナとゼロスの様子を見て、おかしいと思いリナとゼロスに駆け寄ってくる。
「アメリア!ゼル!」
「リナ、一体どうしたんだ・・・まさか・・・おいっ!ゼロス、貴様リナに一体何をしようと」
「リナさん大丈夫ですか?ゼロスさん、説明していただきましょうか」
 アメリアとゼルガディスに言われゼロスは、笑顔で答えた。
「ええ、リナさんを魔族にしようとしていたんですよ」
「魔族に?」
「どういう事だ、ゼロス」
「ええ、実は、僕はリナさんのことが好きになりまして、それで獣王様からリナを魔族にしたら許してやると言われまして
それで・・・」
「ゼ・・・ゼロスさんがリナさんを・・・」
「チッ!なんて事だ」
「アメリア、ゼル。驚いてないで早く助けてよ」
 必死に助けを求めるリナ。しかし、そんなことを全く無視するかのように、アメリアとゼルガディスは、話を続けた。
「ゼルガディスさん。どう思います?」
「確かに、よりにもよってあのゼロスがリナのことを好きになるとは。全くどういう神経しているんだか理解は出来ないが」
「何言っているのよ。ゼル!!」
「しかし、アメリア」
「はい」
「魔族とは言え、リナを必要としている奴がいることは、これは喜ばしいことではないか」
「そうですね。リナさんが魔族になるということはあたしたちにとって、こんな恐ろしいことはありませんが、ゼロスさんがリナさんの
事を好きで、それで魔族になるのでしたら仕方ないことかもしれませんね」
「ちょ・・・ちょっと、アメリア・・・」
 困惑の表情を浮かべるリナ。何故二人がこんな話をするか理解することも出来ず、リナの頭の中は完全にパニック状態だった。
「というわけで、ゼロスさん」
「はい」
「残念だが、リナをゼロスにくれてやろう」
「どうして?・・・アメリアもゼルも・・・」
「リナさん。これからお互い敵になってしまいますが、しょうがないですね」
「まっ、お前さんも魔族になった方が何かと都合がいいかもしれないしな。ゼロス、さっさとやってくれ」
「アメリアもゼルも何よ!あんたたちが魔族のいいなりになってどうすんのよ!!」
「ゼルガディスさんもアメリアさんも、ご協力に感謝します。それでは」
 ゼロスは、改めてリナの方を向きゆっくりと近づいていく。
 リナは、どうすることも出来ず体を動かすことも出来ず、その場に立ち止まったままゼロスを迎えなければならなかった。
 やがて、ゼロスがリナの目の前に立った。リナは思わず目を閉じる・・・・しかし、何も起こらなかった。おそるおそる目を開けると
リナの目の前にボードの様なものがあった。そして、そこには
───どっきり作戦!!───
と、かかれてあった。
「ど・・・どっきり?」
 リナが、唖然としていると、ゼロス、アメリア、ゼルガディスの3人は声を合わせ
『イエェイ、大成功』
 そこら中に聞こえるような大きな声で叫んだのであった。
「いやぁー、こんなにうまく行くとは思いませんでしたね、ゼルガディスさん」
「たしかに、あのリナがここまで引っかかってくれるとは」
「まあ、僕自身はこんな小さな悪事、獣王様にしれることが一番不安なんですが・・・」
「何言っているんですかゼロスさん。たとえ小さな事でも、充分ですよ。魔族として立派につとめを果たしてますよ」
「そうですか?」
「まあ、普段俺らはリナに散々コキ使われていたからな。たまにはこういう事でもしないとストレスが溜まる一方だからな」
「さ、もう一回みなさんで言いましょうか。どっきり作戦」
『だいせい・・・』
「どやかましい!!!」
 三人の会話を聞いていたリナが、ようやく口を開いた。口調は今までにない怒気を含んだものだった。
 三人は一瞬目を合わせ、ゆっくりとリナの方を向いた。
「あ・・・あんたら・・・あたしをだますとは・・・いい度胸・・・してるじゃ・・・ない?」
「リナさん・・・そんな怒らないでくだ・・・・」
「怒るなだぁ!!これが怒らずにいられるかいっ!!あんたら・・・完全にあたしを怒らせたわね・・・」
「リナ・・・」
 リナの様子に三人は大量の汗を流していた。
「ゼロス、アメリア、ゼル・・・そこを動くんじゃないわよ・・・ふっ・・・ふふふふふふふふふふふふふふふふ」
 リナはそう言うと、何かをつぶやきはじめた。
 リナについている4つのタリスマンが光り出す。そして・・・・・・・・・・・

─── 黄昏よりも昏きもの
     血の流れより紅きもの

「お・・・おいリナ・・・」
「リナさん・・・?」
 ゼルガディスと、アメリアが滝のような汗を流しながら、リナを見つめる

     時の流れに埋もれし偉大な汝の名において
     我 ここに闇に誓わん

「まさか、リナさん・・・あれを」
「おい、リナ。こんなところでそんなもんぶっ放したら・・・」
「これは、困りましたねえ・・・じゃ、僕はここら辺で・・・」
「ゼロスさん何を」
「貴様、逃げるつもりか」
「いえ、僕は役目を果たしましたから、もう用はありませんよね、アメリアさん、ゼルガディスさん」
 そう言って、ゼロスは二人の前から姿を消した。その間にも。リナの呪文は続いた。

     すべての前に立ち塞がりしすべての愚かなるものに
     我と汝が力もて
     等しく滅びを与えんことを!!───

「リナ!やめろぉぉ!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 アメリアと、ゼルガディスは逃げようとしたしかし・・・

「もう遅いわ。ドラグスレイィィィィィィィィブッ!!」
 リナの呪文が発せられ、二人の前に炸裂した。

────ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!────

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」
「リナさんの、オニィィィィィィィィィィィッ!!」
 二人は叫びながら遠くへととばされていった。

「はぁはぁはぁ・・・よ・・・よくも・・・あたしを・・・今度やったら・・・ふっ・・・ふふふふふふふふふふふふふ」
 リナの不気味な笑いは夜遅くまで続くのであった。

 因みに、肝心の夕食だが、ガウリイがものの見事にたべつくしていた・・・らしい・・・

[END]




あとがき     by闇斗(あんと)
  ども、闇斗でございます。
今回は、ちょっと笑えるような作品を作ろうと思いましたが・・・・・・・笑えんなこれじゃ(苦笑)
今まで、『スレイヤーズ』を舞台にした作品を作っていなかったので、作ってみました。
前回、ダーク作品を掲載した後、感想などをいただきましたが、中には作品に感情移入しすぎて泣いてしまった方もいらっしゃるようで
正直、そこまでと思いながらも、僕の作品で何かを感じてくれているんだなってうれしく思っています(ただ単にリナが死ぬのが嫌なだけかもしれませんが)
まあ、中には僕を監禁して拷問をかけた。どっかのダークが嫌いな姉ちゃんもいましたが(笑)
これからも、いろんなタイプのゼロリナをかけたらいいなと思っています。だからシアちゃん。首についている変な首輪はずしてね(はぁと)
一応、僕の所のシアのオリジナル作品数くらい作る気でいますので、ま、オリジが増えればさらに作品も増えると思います。
と、何気なくプレッシャーをかけていますが(笑)
それでは、次回作も楽しみにしていただけたら、幸せです。それでは。






ぷ、プレッシャーかかるぅー(^^;)
ということで闇斗さん、ありがとうございます♪
そうですね。いつもの闇斗さんらしく(…え?)前回はかなりダークでしたもんね(汗)
やはりダークの後は3倍甘甘ゼロリナを書かなくてはっ♪(だめですよ。甘甘の後はダークを3本読む、だなんて/笑 そっくりまるまるお返しします♪)
どっきり、懐かしいですよねーー!!
あれは今でもやっているのでしょうか??昔はよく見てました(^0^)
うん。でもリナちゃん、魔族になる資格がある、とゼロスくん仰っていましたがまさにその通り!
しかもおいしすぎるドラグスレイブまで発動してしまうんですもん。サービスしすぎです(笑)
皆様は「すれいやーずふぁいと」をご存じですか???
トレカなのですが、あれでドラグスレイブをぶっぱなしますと相手の方がかなぁぁぁり悲惨な目にあいます(苦笑)
そのうちシアもぶっぱなたれそうです。あ、もしかしてギガスレイブになるのだろうか……?(^^;)
でもリナちゃんに呪文かけられるなら嬉しいかも(怪)
よし!シアも頑張ってオリジ書きますので闇斗さん、よろしくお願い致します!!
どうもありがとうございました!

シア